向精神薬の等価換算 2017年版

等価換算表を利用する際の留意点

本冊子に掲載されている等価換算値は,1)エキスパートが作成した従来の換算表におけるコンセンサスと 2)二重盲検比較試験における治療成績(エビデンス)の2つを根拠として作成されたものである.

原則として,それぞれの向精神薬の主たる治療効果(抗精神病薬は抗精神病作用,抗パーキンソン薬はパーキンソン症状の治療効果,抗うつ薬は抗うつ作用,抗不安薬・睡眠薬は不安障害や睡眠障害に対する治療効果)を評価しており,抗精神病薬による鎮静作用や抗パーキンソン薬の抗コリン系副作用,抗不安薬・睡眠薬による離脱症状の治療効果などはこの等価換算表では評価の対象にはなっていない.

これらの等価換算は,臨床試験においては対象患者の服用する向精神薬概算服用量の一元化や比較対照薬の用量設定,あるいは概算服用量による患者選択基準の際の根拠として,また,日常臨床においては多剤併用療法を受けている精神疾患患者の概算服用量の把握や,向精神薬の切り換えの際の投与量設定の目安として使用することが期待される.

等価換算による情報のみに基づいて機械的に薬物投与量の決定を行ってはならない.掲載されている各薬剤の等価用量はあくまでも大まかな一つの目安であり,併用薬剤の有無や薬物代謝酵素活性レベルなどかなりの個人差があるので,日常臨床における最適治療量の把握は当然のことながら注意深い臨床観察に基づくべきである.

参考文献

  • 1)稲垣 中,稲田俊也:臨床精神神経薬理学テキスト改訂第3 版.星和書店,東京,486-494,2014
  • 2)Inada T,Inagaki A:Psychiatry Clin Neurosci 69:440-447,2015
  • 3)稲垣 中,稲田俊也:臨床精神薬理 18:1475-1480,2015
  • 4)稲垣中,稲田俊也:臨床精神薬理 20: 89-97, 2017